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NHK受信料(2)

NHK受信料は基本的に世帯を賦課単位としている。世帯内の受信機の台数は問われないが,単身赴任や大学進学による別居状態が発生すると,家計内の受信機台数は同じでも受信料は2倍に増加する仕組みであった。2009年からは受信料の増加を,1.5倍に納める「家族割引」が導入されている。しかし受信料が情報の購入対価であり,情報の摂取量は人数と比例的であると仮定すれば,賦課方式を「人頭税」に改めるべきだろう(高齢者等に対する社会的割引は別途考慮が必要)。

Household statistic (MLHW, 2015)
上図(平成26年「国民生活基礎調査」厚生労働省)は,テレビの本放送が開始された1953年以降の世帯数と平均世帯人数の推移であるが,世帯数はほぼ一貫して増加している。それに伴って世帯人数は減少を続け,現在では1953年の半分以下となっており,世帯単位の賦課に「重税感」が伴う原因となっている。そもそも情報の受け手である人口が減少を続けており,一般の商品なら需要減に対応した規模縮小が必要になるが,賦課単位である世帯数(特に単身世帯)の増加だけを見て,もっと受信料が取れるはずだと考えることは,国民の負担力を無視した議論と言えよう。

昨今NHKは,ホテル客室に設置されたテレビの受信料に対する懲罰的提訴を行っているが,もしも受信料が個人賦課であるなら,ホテル客室であろうと別荘であろうと,個人の支払う受信料に対するサービスを別の地点で受けているに過ぎない。従って本来の請求額は,受信料を支払っていない客(たとえば外国人観光客等)に対する賦課分に,客室稼働率を加味した程度で済むはずであり,客室1室を世帯1戸と同等だと考えるには無理がある。逆にどうしてもホテル客室にこだわるなら,衛星・ケーブルテレビで実施されているような,受信機を賦課単位とする課金方式に移行することで公正性が確保できる。

受信料・世帯人員・GDPの変遷
表は1975年以降の地上波テレビ受信料月額,及びその関連指標をまとめたものである。全世帯受信料収入は,全世帯がカラー契約を12ヶ月分支払ったと仮定する場合のfull revenueであり,名目GDPが1975年から2012年までに3.13倍にしかなっていないのに対し,全世帯受信料収入はその間に4.01倍と,世帯数増加に伴ってGDP以上の増加を示すことになる。しかし経済状況と離れても,受信料収入は関係なく伸びるべきだ,とする主張は受け容れ難い。実際平均世帯人員で割った1人当たり受信料は,1975年から2014年の間に3.56倍に上昇しているが,最低賃金の伸びは東京都でも3.44倍に留まり,受信料の上昇に追いついていない。1人当たり受信料の上昇を最低賃金の範囲内に留めなければ,受信料の「重税感」は高まる道理である。
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NHK受信料

NHK受信料の義務化を求める意見が再燃している。9月24日,自民党の情報通信戦略調査会・放送法の改正に関する小委員会は,NHKの受信契約の有無に関わらず受信料を徴収する「支払い義務化」を求める提言をまとめた。(毎日新聞) BBCの制度等が引き合いに出されるが,政府からの独立が担保されなければ公共放送とは言えず,「政府が右と言うことを左とは言えない」(籾井会長)ようでは,国営放送そのものである。

日本最古の民間放送であるJOAR(CBC)・JOOR(新日本→MBS)が開局したのは1951年9月であり,放送法旧32条の規定:「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。(以下略)」が施行された1950年5月時点には,受信機(当時はラジオ契約のみ)を設置した段階で,聴取可能な国内放送はNHKと米軍放送(現在のAFN)しかなかった。従って受信機を設置したらNHKを聴くに違いないという推論が成り立った。

しかし現時点ではTVチャンネル数は地上波・BS・CSやケーブルTVの自主制作を合わせて数百のオーダーに達しているから,受信機を設置したからNHKを視るに違いないという推論は成立しない。加えてNHKの「国民生活時間調査」で見ても,テレビ行為者率(テレビを見た人)は,平日で1995年の92%から2010年の89%と微減に留まるが,20歳代女性では90%から78%へ大幅に減少している。ただし国民全体の平均視聴時間は微増しているが,これは視聴時間の長い高齢層の増加によるものである。(「放送研究と調査」2011年6月)

放送は情報財であるから,最初の1チャンネルに対する支払意思額が1000円であったとしても,2チャンネル目は500円,3チャンネル目は200円という風に指数的に逓減する。一方,供給者側の費用はチャンネル数に比例的であり,これを総括原価方式で回収することには合理性が無い。民間の放送事業者が多数存在する中で,NHKがテレビ地上2波・衛星2波・ラジオ3波を持ち,その費用を賄う水準に受信料を定める必然性は皆無だろう。

NHKのチャンネルは,地上・衛星各1波,ラジオ1波で十分だと考えられる。教育テレビは全国放送なので衛星放送に適し,ラジオ第2放送は衛星のサブチャンネルで流せば足りる。地上波は報道・科学・ドキュメンタリーのみとし,娯楽は民間事業者に任せればよい。残りを民間に移管すれば,供給費用は現在の半額以下で済むはずである。アメリカの公共放送はテレビのPBSとラジオのNPRであるが,これらは受信料ではなく視聴者からの寄付と民間企業の協賛で成り立っている。

放送は純粋(地方)公共財であり,本来フリーライドを排除できない。しかし現在では,放送を私的財にする上で技術的困難は無い。公平性の観点からは,支払意思額に応じて支払うこと(リンダール均衡)が望ましいが,支払意思額を正直に申告するインセンティブが働かないとすれば,スクランブルによって料金徴収を行うのが合理的である。しかしNHKは,国民の支払意思額が低いことを知っているので,色々と屁理屈を付けてスクランブル化を拒み続けている。

Network News Feed

JOOK

NHK京都第1放送(JOOK, 621kHz, 1kW)は,2月2日午前1時を以て停波する。放送開始は1932年6月で,基幹局から順に割り当てられたJO○Kのコールサインでは,本土で12番目,JONK長野とJOPK静岡の間に位置する。(JODKはソウルに割当てられ,EK・MKは欠番であった。) 周波数は発足時の960kHzから,1070→1300→620kHz等を経て,1978年11月23日の9kHzピッチへの一斉変更により621kHzになった。

かつては全国各地にあったNHKの地方局はコールサインを持ち,ローカル放送を実施していた。京都府内でもかつてはJOOQ舞鶴第1やJOOT福知山第1が存在したが,これらは単なる中継局に格下げされ,コールサインは廃止されている。京都第2 (JOOB)は,大阪局の300kW化に伴い1973年に廃止されているが,廃止の魔手が遂に府・県域局の第1放送にも及んできた。(もっともヨーロッパではAM局廃止の流れは止まらず,長波はほぼ壊滅状態だし,NHK第1でも一部中継局はFMを使用し,東京の民放局も今春からFMによる「補完中継」を開始する。)

1958年~2009年にラジオ第1で日曜朝に放送された「リレーニュース郷土の話題」は,かつては基幹局(福岡以外は旧中央放送局)以外の地方局もリレーに参加していたが,最後の数年は基幹局だけとなり,他の「列島リレーニュース」と変わらなくなった。(これはラジオ日本でも放送された時期があるが,国際放送では「日本ところどころ」と称するリレー番組がそれ以前から存在した。)

基幹局についても,かつては朝の帯番組(「ラジオいきいき倶楽部」等)で大阪制作の週があったが,東京への「1局集中」が進んでいる。NHKは東京が大地震等で被災した場合は,大阪から全国放送を行う方針とされるが,地方局から府・県域局へ,府・県域局から基幹局へ,さらに基幹局から東京へと制作が集中している。これは制作能力の維持や「地方創生」の観点からも望ましくない。

アメリカの3大ネットワークだと,報道はNew Yorkでも娯楽系はLos Angelesに拠点が分散し,CNNはAtlantaに拠点を持つため,マスコミ関係への就職希望者が1点に集中することはないし,大企業の本社も全米各地に分散している。日本の問題点は,本来は政府から独立すべき教育・研究機関を含めて,あらゆる分野で東京への政策的集中が進められて来たことである。

RAE (Radiodifusion Argentina al Exterior)

第125回IOC総会で思い出したが,1970年代から90年代を通じて,日本向日本語放送を行う短波局のうち,最も受信が難しかったのが,アルゼンチンのRAEだった。今はインターネットフィードもあるが,今年5月に中国語放送を新たに開始したというのは,削減・廃局が相次ぐ短波界では,今も拡張主義的な中国国際放送局(CRI)を除くと稀だろう。

  • RAEの多言語開始テーマ (1993年春に北米東部で録音)
  • 中国語ばかりが目立つRAEのホームページ
  • VOA Okinawa Relay

    VOA logo in 1960's
    昨年11月10日付の記事と関連して,かつて国頭村奥間ビーチにあった,VOA沖縄中継局のsign-on音源を2つ掲載する。(リンク中で曖昧な停波日は1977年5月14日,中波の周波数は1178kHzの誤り。)

    VOAのインターバルシグナルは,1968年までは"Columbia, the Gem of the Ocean"(大洋の勇者)だったが,1969年頃,現在の"Yankee Doodle"(アルプス一万尺)に変更された。随分前から,中継局名はアナウンスされなくなったが,かつてはsign-on,言語間 interval,sign-off時にstation IDがあった。

  • 1965年8月
  • 1971年頃

    なおVOA日本語放送は,1970年2月末で定時放送を終了している。
  • 沖縄からの大陸向け中波放送

    短波の時代が終わりを告げたことは明白で,今年だけでもRNW(オランダ),RCI(カナダ)等が放送を終了した。聴取者の減少と,情報発信はネットで足りること,さらに各国政府の財政事情があり,BBCやDWもアフリカ向けを除くと終了に近い状態である。しかし常に言われることだが,途上国の電気も無い地域や,情報統制のある全体主義国家へは,不安定さは否めないにせよ,ラジオが依然として唯一の情報伝達手段であることに変わりはない。

    尖閣の問題にしても,関係悪化を恐れて,中国人民(特に地方部の情報弱者)へ向けて,直接語りかける努力を怠って来たことを反省する必要がある。かつて米軍政下の沖縄には,中国向けの中波局が奥間ビーチに2局存在したが,それに相当する沖縄からの情報発信の復活は検討されて良いし,些少とは言え,沖縄の雇用にもつながるはずである(ただし編集権を沖縄が持つことが重要)。

    1局は言わずと知れたVOA沖縄の1178kHz(1000kW)で,1976年時点では,11:00-16:00GMT(UTC)の5時間送信だった。内訳は,11:00-12:00が英語,12:00-13:30が中国語,13:30-14:00が朝鮮語,14:00-16:00が中国語であり,中国語・朝鮮語では異なるビームが使用され,朝鮮語部分は西日本でも非常に強力に受信できた。(VOA沖縄は復帰後5年間の暫定運用であったため,1977年5月14日で停波し,翌日からJOOR毎日放送が1210kHzから1180kHzにQSYした。)

    もう1局はFEBC極東放送で,KSAB 1020kHz(英語5kW), KSDX 1250kHz(日本語5kW)に加えて, KSBU 1360kHz(中国語100kW)を運用していた。沖縄の本土復帰に伴い,英語放送はJOFFとして5年間の継続が認められたが,対外放送であった中国語は即時停波となり,済州島へ移ってHLDA 1570kHz(250kW)(現在のHLAZ 1566kHz)になった。日本語放送JOTFは,財団法人から株式会社となり,1984年に中波からFMに移動してFM沖縄になった。

    震災一周年(2)

    JOIR-TV1
    日本国内のテレビジョン放送の大勢は,2011年7月25日を期してデジタルに移行したが,福島・宮城・岩手の被災3県では,生活情報等のニーズが高い一方で,中継施設の再建やテレビの再購入にまで手が回る状況ではなかったため,アナログ放送の停波を最大約8ヶ月間延期することになった。

    画像は猶予期間終了に伴い,3月31日午後に流された「青画面」の例である。SONYのロケフリにより静岡県で受信したものだが,リモコン学習機能の無いPK1も同日を以って引退となった。JOIR-TVは1959年4月に放送を開始した,東北地方最古の民放局であり,本局の映像周波数91.25MHz,音声周波数95.75MHzであった。

    日本のTV Ch.1~3の帯域(VHF 90~108MHz)は国際的にはFM音声放送に割当てられる場合が多いが,日本では「移動体向けマルチメディア放送」に割当てられる。

    JJY:40kHz 一時停波

    (独)情報通信研究機構が運用する標準電波JJYのうち,東日本をカバーする大鷹鳥谷山送信所の停波情報が出ている。

    ====引用開始====
    停波のお知らせ   2009/1/29 (Thu) 08:26

    おおたかどや山標準電波送信所(JJY:40kHz)において、送信機コンソール等計算機の更新作業を行うため下記の日時(日本時間)に停波を予定しています。

      2009年2月23日(月)~27日(金) 08:30~17:30

    電波時計や周波数基準源として標準電波をご利用の皆様には、ご不自由をおかけしますが、標準電波の安定供給を維持するために必要な作業ですので、ご理解の程よろしくお願いいたします。
    ====引用終了====

    2月25日(水)~26日(木)には国公立大学前期日程の個別学力試験が実施されるが,試験時間中,東日本では電波時計の時刻取得ができなくなる可能性がある。特に2002年以前製造の,40kHzしか受信しない機種では注意が必要だ。

    因みに現在運用中の長波標準電波局は以下の通りで,南半球には無いようだ。

    CallLocationFrequency
    JJY大鷹鳥谷山(福島)40kHz
    JJY羽金山(佐賀)60kHz
    BPC河南省商丘68.5kHz
    MSFAnthorn, UK60kHz
    DCF77Mainflingen, BRD77.5kHz
    WWVBFort Collins, CO60kHz

    NHKと監督官庁(2)

    東京日日 1934-5-19

    昨年10/17付で引用した記事の半年後,1934年5月19日付の東京日日新聞。各放送局で理事が重複し,放送局間の調整がうまく行かないという不効率を解消するためと称して,逓信省の監督強化を図った結果は大量の天下りであった。さすがに会長だけは実業界から連れてきたが,それ以外の幹部は殆ど逓信省からの天下りで占められる結果となった。

    新たに「中央放送局」の制度が導入されたが,その所在地は逓信局(後の郵政局)の所在地と同じで,札幌(IK)・仙台(HK)・東京(AK)・名古屋(CK)・大阪(BK)・広島(FK)・熊本(GK)。このうち熊本以外は中央放送局の名称が無くなった現在も,ブロック局として機能している。(この時点では,松山(VG→ZK)は含まれていない。)

    それにしても昔の新聞記事は,「爺捨山」「隠居所」などと強烈である。記事は「高度の統制の次に来るもの」への懸念を表明しているが,放送番組の国家統制が強まり,上意下達の政府メディアへ成り下がって先の大戦へ突き進むことになった。
    ※戦時下の数少ない娯楽番組であった「前線に送る夕べ」のテーマ音楽の一節が,数少なくなった寝台列車で流れる車内放送チャイムに使われていることはよく知られている。

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