Trolley.Net Blog

http://blog.trolley.net/

School Year

2006年9月に発足した第1次安倍内閣は,政権構想の中で「大学(国公立大)の入学時期を9月に変更し、高校卒業から大学入学までの間にボランティア活動を義務付ける」施策を「教育再生」の一環として唱えていた。この時には,高校卒業から大学入学までの半年間の「ギャップターム」は,ボランティア活動等の社会経験を通じて規範意識の向上を図る機会,として捉えられていた。

東京大学でも濱田学長が9月入学を提唱したが,むしろ研究・教育面での国際交流の促進が主眼であり,欧米の主要大学とセメスターが一致しないことが単位取得を伴う短期留学や,サバーティカルの運用(送出し・受入れ共)を困難にしているという認識に基づくものと言える。結局,学内の意思が統一できず,クォーター制の導入に落ち着いた経緯がある。(学内広報「入学時期の在り方に関する懇談会中間まとめ特集版」2012.1など参照)

第2次安倍内閣では,THE(Times Higher Education)等の大学ランキング向上のための「グローバル化」を狙って,留学生や外国人教員比率の向上を目指す政策に変容しているが,「近視眼的偏差値対策」に汲々とする結果,高等教育の本質を見失うようでは本末転倒であろう。

因みに9月入学がグローバルスタンダードのように喧伝されるが,これは北半球中緯度に先進国が多いことの帰結であって,学年暦の期間は国によって様々である。実際,日本の学年暦・会計年度は,世界第2位の人口大国であるインドと一致しており,韓国や南半球のブラジルも微調整の範囲にある。(UNESCO/文科省調べ)

国名学年暦会計年度始期国名学年暦会計年度始期
アメリカ9月~6月7月オーストラリア1月~12月7月
イギリス9月~7月4月カナダ9月~6月4月
フランス9月~7月1月メキシコ9月~7月1月
ドイツ8月~7月1月ブラジル3月~12月1月
イタリア9月~6月1月インド4月~3月4月
デンマーク8月~6月1月中国9月~7月1月
ロシア9月~6月1月韓国3月~2月1月

日本では高等師範学校の入学時期が,1887(明治20)年度から会計年度に合わせて4月になり,その他の師範学校や小学校もこれに引きずられる形で4月入学となった。さらに中学校も1901(明治34)年度から4月入学が法制化されたが,旧制高校・大学については9月入学が維持されていた。これが4月に揃えられたのは,旧制高校については1919(大正8)年,大学については1921(大正10)年であり,その時の理由はやはり「会計年度と一致しないと不便だ」ということであった。

しかし上表を見てもわかるが,学年暦と会計年度が一致している国は稀であって,何でも大蔵省(財務省)の基準に合わせるということに必然性はない。大正期までは旧制高校の入試は中学卒業後の「ギャップターム」に行われていた訳で,その期間の使われ方には興味がある。例年,センター試験や個別学力試験は雪害に悩まされるが,少なくとも当時は,それに類する心配は無かったはずである。

就職協定が変更になって,就職活動が3月以降に繰下げになったが,大学における勉学時間を阻害することには代わりはなく,特に理系では卒・修論の作成時間が取れなくなる懸念がある。たとえば大学を9月入学7月卒業にして,8月から翌年3月までの間に就職を決めるなど,大学入学前後に延べ1年のギャップイヤーが取れれば,教育の質保証やスケジュール的余裕の意味で望ましいが,それに対する反論はその間1年分の生活費の支弁方法である。となれば,やはり新卒一括採用に問題があるとなって,議論は堂々巡りに陥る。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://trolley.blog78.fc2.com/tb.php/200-b9c6b134
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad