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政令市・特別区の火葬料金

縁起でもない話題で恐縮だが,地方自治体の施設利用料金において,非住民に過大な負担を求める傾向が強い火葬料金の格差について問題提起したい。同様な公営施設であっても公立病院の場合は,保険診療報酬が全国一律で定められているため,このように露骨な料金差別は発生しない。

Cremation fees in Japanese major cities, 2016

原則は,同一サービス・同一料金とすべきだが,公営施設では往々にして住民・非住民で差を付ける場合がある。経済学的には「二部料金制」と呼ばれ,電気・ガスの料金が,資本費に相当する基本料金と使用量に比例する従量料金の和となる等,固定費用の比重が高い産業で採用される制度と類似している。つまり住民は税金等で施設建設費を負担しているのに対し,非住民は負担していないのだから,住民からは燃料費等の可変費用のみを徴収し,非住民からは固定費用(建設費の減価償却分)を上乗せして徴収するという考え方で,一定の合理性はある。(料金は2016年9月現在)

しかし住民料金が無料である市を除いて,住民と非住民の大人料金の比率は,東京都瑞江葬儀所の20%増から名古屋市の14倍まで,差額で見ると,瑞江の12,160円から堺市の8万円まで大きくバラついていて,二部料金制に言う固定費用に係る適正負担を逸脱する自治体が多いように見える。事実,非住民料金が東京都の民営斎場の料金を超える政令市は7市に及び,安くて良質なサービスを提供すべき公営施設のイメージからは離れている。

昨今,どこの自治体も財源不足であることは解るが,だからと言って応益負担を超えるツケを非住民に回すことは不公正である。しかし非住民には当該自治体の政策決定に係る投票権は無く,行政への反発が出にくいので,安易に非住民へ負担を転嫁する誘因が働く。利用者側でも,何度も利用する施設ではないこと,競合施設が事実上存在しないことや,民営施設における「心づけ」と同様の理由で,理不尽だと思っても受け容れざるを得ないため,一種の「ひき逃げ戦略」が可能になる。

この種の非住民への課税の例としては,京都市の「古都保存協力税」(1985.7~1988.3)が想起される。代表的な観光寺院等の拝観料に1回大人50円・小人30円を上乗せして徴収する法定外地方税であったが,拝観者の殆どは京都市外からの観光客であることを考えれば,応益負担の原則に反するとの批判があった。むろん文化財の補修や参道の整備は必要であり,それを京都市民のみが負担することには問題があるが,この税は文化財等に使途を限定した目的税として提案された訳ではなく,原則非課税である宗教法人への代替的課税の側面が強かった。そのため府下寺院の連合体である「京都仏教会」が主導した,拝観停止(お寺さんのストライキ)等の強硬手段の結果,3年足らずで廃止に追い込まれた。

この場合は,徴税者(市)と特別徴収義務者(寺院等)は別主体であり,後者は宗教活動の自由への制約(端的には拝観者の減少)と言った立場から反対した。火葬需要は非弾力的であり,一定の独占力が行使できるため,価格設定の公正さに対する監視が必要である。しかし価格を監視すべき自治体が同時に設置者であること,新規参入が事実上不可能であることが,不公正な価格設定を可能にしている。

自ら火葬施設を設置せず,一部事務組合にも加入していない,いわゆるフリーライダーに相当する自治体が存在することは事実である。例えば京都府南部には,京都市と宇治市の単独施設が存在するだけで,旧乙訓郡・綴喜郡・相楽郡に属する市町村住民はこの両市に加えて,四条畷市や奈良市等,隣接府県の施設を域外利用する。しかし非住民と雖も,何れかの施設設置自治体に居住している者が大勢であり,居住自治体において長年固定費用部分を負担していたはずである。にも拘らず,たまたま死亡時に他の自治体に居たという理由で,懲罰的な料金を負担させられるのは公正とは言えまい。

例えば地方部の高齢者が住民票を残したまま大都市の病院に入院する,高齢の親を都市に住む子供が一時的に呼び寄せる等のことは,今日では一般的である。その期間中,不幸にして高齢者が亡くなった場合,最近の直葬の一般化もあって現地で荼毘に付すのも,ごく普通のことである。この場合,子供は自分が住民であるにも拘らず,高額な非住民料金を負担しなければならない。その意味で,川崎市がH.28年度から,市民の範囲を以下のように拡大したことは歓迎される。
・死亡時に介護保険法(平成9年法律第123号)第13条第1項に規定する住所地特例対象施設に入所または入居し、本市の介護保険被保険者であった方
・死亡時に障害者総合支援法(平成17年法律第123号)第19条第3項に規定する特定施設入所障害者であって、本市の介護給付費等の支給決定を受けていた方

この規定は,元市民である被介護者が市外の施設で亡くなった場合のみを対象とするため,極めて狭い範囲の拡大に過ぎない。住民料金の適用範囲を,死亡者本人または火葬申請者の何れかが市民である場合にまで拡大することが望ましいが,その方向への第1歩として評価可能だろう。
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